2018年に「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」という本が売れました。タイトルに惹かれ本屋で手に取った方も多いと思います。
中小企業の経営者の平均年齢は60歳台後半になっており、事業承継の一つとして第三者に会社を売却する選択肢が増えています。まさに小規模M&Aが注目されています。
この本が売れた背景は、一般の方々に「M&Aが身近なものだ」と思わせたことと「僅か300万円程度で企業のオーナーになれる」という幻想を読者に抱かせたことだと考えています。
サラリーマンは50歳以降になると役職定年やグループ会社への出向などもあり、会社人生に憂き目を見ている人は少なくないと思います。今さら脱サラして起業する勇気はないし、他社へ転職するのは簡単でないと考える人にとって、こんな選択肢があったのかと強い関心を持たれたことでしょう。
さて、実際に会社を300万円で買うことができるでしょうか。
答えは、「イエス」です。
買収対象企業のキャッシュフローや資産状況などを検討した結果、売り方と買い方の双方が売買金額に納得すれば、その金額で株式を買い取る事は可能だと思います。
では、300万円以外にお金はかからないでしょうか?
答えは、「多額にかかります」です。
実際は、買収企業の会計や税務が正しいか、法的に問題ないか、ビジネス上でリスクはないかなどを専門家に依頼して精査するための費用がかかります。これをデューデリジェンス費用と言います。金額は数十万円から数百万円まで千差万別です。さらに、買収先企業を紹介してくれたアドバイザーへの報酬支払などもあります。
つまり、300万円で会社を買うためには、それ以外の多額の費用がかかるわけです。
忘れていけないことが、もう一点あります。買収先企業の有利子負債です。もし、買おうと思った企業が金融機関から借入をしている場合は、新しいオーナーが債務を個人保証しなければならないケースが考えられます。借入金が1千万あった場合、たとえ300万円で会社を買っても、1千万円の潜在的な借金を抱えることになるわけです。
以上、一般のサラリーマンがM&Aに係わる難しさをお伝えしましたが、専門家に相談することでスムーズは事業引継ぎができる事例も増えつつあります。
新たに会社のオーナーになりたい方は、是非ともチャレンジして欲しいものです。