映画「グリーンブック」を観て

先日、アカデミー作品賞に輝いた「グリーンブック」を観ました。

グリーンブックとは黒人しか泊まれないホテルリストを載せた旅行ガイドのことです。

1962年のアメリカ南部では人種差別がひどく、黒人が利用できる施設は限られていました。そのような時代に、車で演奏ツアーをすること自体が非常にリスクのある事でした。

「黒人ピアニスト」と「差別主義者の白人運転手」の2人が最初は反発しながら、徐々にお互いを理解し合える関係になっていく過程が描かれていて、非常に感動的な作品でした。

1980年代、私はアメリカに行きました。この映画の舞台になった時代から20年は過ぎていました。グレイハウンズという長距離バスでカントリーミュージックの聖地ナッシュビルを目指し、アメリカ南部を旅しました。当時のアメリカは景気が最悪で、特に南部の街は浮浪者も多く荒廃していました。

旅の途中、ニューオリンズの小さなシーフード店で食事をしたところで、大変な目に遭いました。料金を支払おうと店主のおばあさんにトラベラーズチェックを出したところ、「こんなトラベラーズチェックは見たことがない。現金で支払え」と言うのです。

当時は、東京銀行のみがトラベラーズチェックを発行していたのですが、アメリカ南部では余り流通していなかったようです。そもそも日本人が少なかった時代です。

現金を持っていなかったので困惑していたところ、店主は受話器のダイヤルに手をかけて警察に電話し始めました。絶体絶命の中、靴底に50ドルを隠していたことを思い出したのです。とっさに靴からお金を取り出し、支払うことができました。緊急用に隠し持った50ドルが私を助けてくれました。

もし警察に無銭飲食で捕まっていたら、すぐには釈放してくれなかった可能性もあります。

「グリーンブック」を観ていると、黒人ピアニストが何度か警察に捕まるシーンが出てきます。黒人というだけで警察からマークされるのですが、妙に昔の自分と重ね合わしてしまいました。